ところか、2作目のKAFKA迷宮の悪夢は大違いだ。
10年以上前に書かれた脚本を元に、プラハで撮影されたこのスリラーを見ていると、こちらかテビュー作ではないかと思える。
なにしろほぼ全編、借り物の寄せ集めなのだ。
オーソン・ウェルズの審判や、テリー・ギリアムの未来世紀フラジルにもよく似ている。
好きな映画のスタイルを再現したいというソダーバーグの気持ちも分からなくはないが、継ぎはぎだらけできこちない上に、情熱のかけらもない。
主人公カフカ(ジェレミー・アイアンズ)は、保険会社に勤める内気な事務員。
ひょんなきっかけから謎めいた殺人事件に巻き込まれ、アナキスト集団と関わるようになる。
そしてついに、カフカは不気味な「城」に潜り込む。
映画は城の場面で、官僚機構に支配された全体主義の恐怖を懇切丁寧に「解説」する(モノクロ映画だがその間だけ画面はカラー に)。
これには本物のカフカも開いた口が塞からないだろう。
芸術映画と不条理劇、怪奇映画と初期のB級映画の要素をすべて併せ持つ映画を作ろうとしたらしいが、結局出来上かったのは、スタイリッシュでやけに自意識過剰なスリラーだ。
おまけに、肝心のスリルはどこにもない。
一流の役者をもってしても、この映画には生命を吹き込めなかった。
わざとらしさか先立って、生身の人間か入りこむ余地なとない。
せめて映画の雰囲気に酔いたいと思っても、のめり込めないうちに終わってしまう。
これは表面を飾っただけの表現主義だ。
この映画で描かれているのは、カフカの抜け穀にすぎない。
【1992.5.21】
監督 スティーブン・ソダーバーグ
主演 ジェレミー・アイアンズ
テレサ・ラッセルー
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